中村さんと僕と

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「よぉ、山田。お前ついにフラれたか?」 「何やらかしたんだよー?」 茶髪に剃りこみ、そしてピアス。いわゆるDQNが僕の机を囲んだ。 「別に中村さんとは付き合ってないよ。それに少ししたらって言ってたし」 僕は適当に答えてスケッチを始める。描いてるのは瓶詰めの砂糖と半分にカットされたレモン。 「嘘つけー。毎日一緒に帰ってどこでヤってるんだよ?穴場あんなら教えろよ」 ガムをクチャクチャさせながらカッコつけてる彼らが憐れに見えてきた。きっと中村さんと関わる前だったらビビってた。 「僕らは君達と違って健全な高校生だからね。不健全な大人ごっこはしないよ」 「んだとぉ!?」 「チョーシこいてんじゃねぇぞネクラが!」 胸ぐら掴まれた。このまま殴られるのかな? 「なにやってんだお前らぁ!」 生活指導の先生が怒鳴りながら入ってきた。 「げ、やべっ」 「ゴリラうざっ」 「んだとゴルァ!やんのかガキ!」 子ザルとゴリラの追いかけっこが始まる。彼らがこうなのはいつもの事。 僕は荷物をまとめて教室を出た。 そっと手のひらを見てみれば震えていた。その手を見て僕は彼らが怖かったんだと自覚した。 同時に情けなくもなった。 以前コギャル達に言い返した中村さんを思い返しながら言ってみたものの、やっぱり僕は僕で彼女の様に勇敢ではない。いくら同じ時間を過ごしてても僕は僕、中村さんは中村さん。この当たり前な事がなんだか悔しかった。 僕は悔しさを抱えながら遊戯室に行った。ドアを開けると食欲をそそる音と匂いがする。 「なにしてんの……?」 鼻歌を歌いながら何かをいじくりまわしてる中村さんの背中に聞いた。 「あ、山田くん!来たなら閉めて閉めて!」 中村さんは振り返ってドアを閉めるジェスチャーをする。 「あ、うん」 僕はドアを閉めて中村さんの向かい側に座った。
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