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間に置いてあるものを見て、目が点になる。
「あのー、中村さん……?」
「うーさーぎーおーいしっ♪なーべーもーのー♪こーぶーなーつーってしーおーやーきー♪」
中村さんはお得意の替え歌を歌う。
「うさぎ!?これうさぎの肉なの!?」
替え歌に驚いて、僕はグツグツと煮えている土鍋を指差した。
中村さんはキョトンとし、目を丸くして僕を見る。
「山田くん、うさぎ食べるの?」
「いやいや、僕は食べないよ……。さっきの歌聞いたら誰だってそう思うけど……。というか何の肉?なんで鍋?」
「まぁまぁ、細かい事は気にしないの」
中村さんはそう言いながら土鍋の中をいじくりまわす。
野菜も肉もちゃんと入ってて美味しそうだ。しかも僕が好きな醤油味とみた。
「ねぇ、くどいようだけどなんで鍋?」
「寒いから」
今度は即答してくれた。
「寒くて学校で鍋やるってなかなかいないと思うけど……。というか食材も土鍋もガスコンロもどうしたの?」
「土鍋は家庭科室から借りてきちゃった。どうせ使わないだろうからこうして有効活用してるんだー。食材はあらかじめスーパーで買ってきて家庭科室の冷蔵庫に入れといたよ。ガスコンロは持参」
「持参って……」
僕は思わず頭を抱えた。
「ちなみにベースはこれね」
中村さんは自分の隣に置いてあるビニール袋から、空になった醤油味の鍋のもとを取り出して見せた。
「レシートある?半分出すよ」
僕がそう言うと中村さんは首を横に振った。
「次のぶん山田くん負担して。それからは割り勘にしよ。それよりはい、出来た」
中村さんは小皿に盛り付けると、割り箸と一緒に僕に渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
中村さんは自分の分を小皿に盛り付けながら言う。
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