中村さんと僕と

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「いただきます」 僕らは手を合わせて食べはじめた。 「んー、美味い!」 「うん、美味しいね」 ひとつの疑問が浮かんだ。 「ねぇ、中村さん。これどれくらいの頻度でやるの?流石に毎日じゃないよね?」 「うーん……」 中村さんは箸先をくわえたまま、視線をぐるりとさせて考え始めた。 「週一くらいかな。毎週火曜日、お鍋の日にしよう。今日もちょうど火曜日だし。山田くんもそれでいい?」 「うん、いいよ」 「よーし、決まり。じゃあ買い物は月曜日の放課後ね」 「うん、分かった」 楽しく鍋をつつき終えると、僕らは片付けを始めた。 食器は家庭科室のものだと聞いたので、僕は家庭科室へ持っていこうとした。 「あれ?どこ持ってくの?」 「どこって、家庭科室だよ」 僕がそう言うと中村さんは首を横に振った。 「いちいちめんどくさいよ。空のおもちゃ箱があるからそれに入れよ。どうせいっぱいあるもん」 「いや、でも……」 「鍋シーズン終わったら返すから!ね?」 「う、うん……」 勢いに負けてついうなずいてしまった。 空のおもちゃ箱にガスコンロと食器を仕舞うと、僕らは学校を出た。 鍋のベースやお肉が入ってたトレーなんかは途中の公園にあるゴミ箱に捨てた。 ゴミを捨てて少し歩けば僕の家。 「またね」 「うん、また明日」 手を振って別れると、僕は家に入った。 母さんは僕を見ながらニヤニヤしている。 「彼女いるならいいなさいよー」 なんだかそれがものすごく不快で仕方がなかった。 「中村さんは彼女じゃないから。友達だよ」 僕は冷たく言い放ったつもりだけど、母さんはそんなのお構い無し。 「またまた照れちゃってー。恥ずかしがり屋さんめ」 肩を小突かれ、僕の中で何かが切れた。 「友達だって言ってんだろ!そんな目で中村さんのこと見ないでくれる!?」 僕はそう怒鳴りつけると家を飛び出した。 「ちょっとどこ行くの!?謝るから待ちなさい!」 母さんの声を無視して僕は走った。
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