中村さんと僕と

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大人って、年頃ってなんで男女一緒にいるとそういう目でしか見ないんだろう?中学時代は淡い初恋の話ばかりが飛び交っていたのに、高校生になった途端、誰と誰が付き合ったとかセックスしたとかそればっか。 高校生になったら男女は付き合った人じゃないと一緒にいちゃいけないの?男女の友情だって青春だよ、なんでみんな分からないの? 小学校の頃は皆、男女問わずに遊んでたじゃないか、楽しくお喋りしてたじゃないか。 頭の中がごちゃごちゃしてくる……。 気づいたら僕は廃墟の前にいた。中村さんといる時はあまり感じなかったけど薄気味悪い。けれど居場所のない僕は足を踏み入れた。 風はしのげるけど寒さはどうしようもなく、僕は思わず身震いした。 僕は横たわったカラーボックスに腰掛けた。 冬の寒さは怒りの熱を徐々に奪い、僕を冷静にしてくれた。 「はぁ、なにやってんだろ……」 そう呟いた途端、気が抜けて暗闇にひとりの状況が怖くなった。僕は逃げるように廃墟から出ると、光を求めて走った。 住宅街に入り、灯りが見えてきたけどまだ足りない。 公園の街灯が見え、僕はようやくほっとする。 走り疲れた僕は公園のベンチに腰掛けた。 「本当になにやってんだろ……」 そう呟いて空をあおぐ。 「本当になにやってるんだ?」 「うわっ!?」 声に驚き前を見ると、父さんが寒そうにコートの前を合わせながら立っていた。 「父さん、なんで……」 「冷えるな、どこか行くか」 父さんはそう言ってお猪口(ちょこ)でお酒を飲む仕草をして見せる。 「僕は呑まないよ」 「誰が呑ませるか。まぁ付き合え」 父さんはそう言って手招きをするので、僕は父さんの隣に並んだ。 「どこ行くの?」 歩き出す父さんに聞いた。 「楽しいところだ」 父さんはいたずらっ子の様にニッ、と笑った。
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