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台所へ行くと、食卓には数種類の鍋ベースが置いてある。
「どうしたの?これ……」
「父さんから聞いたわ、放課後ふたりで鍋してるんだってね?」
「うん、まぁ……」
怒られるかな?でもなんでこんなに置いてあるんだろう?
「よかったらこれ持っていきなさい、今日特売で安かったのよ」
「え?いいの?」
「いいから買ったの。なんだか面白そうな事してるじゃない?よかったら母さんにも中村さんのお話、聞かせてくれる?」
中村さんを友達と認めてもらえたようで、僕は嬉しかった。
「うん、勿論だよ!中村さんはね……」
僕は母さんに中村さんの話を聞かせた。
僕の絵を褒めてくれたこと、変な替え歌を歌うこと、コギャルを言い負かせたこと、やたら青春について語ること、ガスコンロを持ってきてまで鍋をしていること……。思い出した順に話した。
母さんは表情をころころ変えながら聞いてくれる。
「なんだか本当に変わってるわね、中村さんって」
「うん、でもいい子だよ」
「そうみたいね。そうだ、土鍋でやってるならインスタントラーメンでも持って行ったら?ほら、5食入りのやつ」
「えっ」
意外な提案に驚く。
「だって学校は週に5日でしょ?安いやつならひと袋200円くらいだし、お鍋より安く済むわ」
確かに母さんの言うことにも一理ある。
「今度中村さんに聞いてみるよ。鍋の元もありがとう」
「どういたしまして」
母さんは嬉しそうに微笑んだ。
翌日、僕は鍋ベースを3つ持って登校した。途中でコンビニに寄ってバラで売ってるインスタントラーメンをひとつ買う。
店員さんは首を傾げながらレジ打ちをしてくれた。
つまらない時間を過ごして放課後、僕と中村さんは遊戯室へ行った。
「中村さん、母さんからいくつか鍋ベース貰ってきたよ」
僕はカバンから鍋ベースを取り出した。
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