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帰り道、5歳くらいの女の子とその子のお母さんが歩いていた。
「ママ、さっちゃんバナナ食べたい!」
「いいけどお腹壊しちゃうからママと半分こね」
「うん、ママと半分こー」
親子は楽しそうに僕らとすれ違う。
そういえばさっちゃんの童謡あったっけ。
「さっちゃんはねー♪バナナが苦手だほんとはねー♪ほんとは苦手だからバナナは半分しか食べられないんだよ♪嘘つきね、さっちゃん♪」
さっきの親子に聞かれてないかひやひやしながら振り返った。幸いな事に親子の姿はそこにない。
「なんでさっちゃんはバナナ嫌いなの?」
「だって小さい子なら好きな物目の前にあったら何も考えずに食べそうじゃない?食べ終えてから食べ過ぎたってなると思うの。だからさっちゃんが本当にバナナが好きなら丸々1本食べちゃうはずだよ。かと言って嫌いなものを食べるわけもない。ということはさっちゃんはバナナが苦手だったんだよ」
中村さんは我ながら名推理と言わんばかりのドヤ顔をしてみせる。
「見事な名推理だよ、ホームズくん」
「それほどでもあるかな、ワトソンくん」
そのやり取りがなんだかおかしくて笑った。
「それじゃ」
「またね」
いつも通り僕の自宅前で別れる。そして僕はいつも通りご飯や風呂を済ませて寝た。
翌日、この日は僕も父さんも休みの土曜日。
僕は父さんに連れられ、何故かショッピングモールにいる。
「ねぇ、べーゴマなんてここに売ってるの?」
「たぶんな」
「たぶんって……」
「お、あったあった。あの店だ」
父さんが指さした先には駄菓子屋がある。それも昭和から切り取ってここに貼り付けたんじゃないかというような駄菓子屋が。
「へぇ、こんなところあったんだ」
「よし、探すか」
父さんは楽しそうに駄菓子屋に入る。中には昔のアイドルやボンカレーなどの看板やブロマイドがあちこちにあった。
品物を見れば僕でも知ってる駄菓子もちらほらある。
「孝汰、あったぞ」
父さんは嬉しそうにべーゴマをふたつ持ってきた。
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