1* 仔猫と水槽

29/30
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「ねえ、暁水・・・、 俺が先生になってしまう前に・・・、」 「・・・うん?」 水清が一歩近づいて、暁水の体に当たってしまいそうだ。 暁水が、その近さにうろたえていると、 「ちょっとだけ、悪いこと、しようか?」 って、水清が眼鏡のを外して微笑んだ。 その顔をみて、こねこは、うあって驚いた。 あの、大人で大人で、とても追いつけない存在の水清が、 まるで、いたずらをする少年みたいに笑ってる! “水清って、こんな顔するんだ・・・?!” 初めて見る表情。 その素敵さに心臓はずきゅ、とやられてしまうし、意識は一層ふあっとなって、暁水の頭の中は大混乱の渦だったけど、 ”水清の恋人は、水清のこんな表情をいつも見るのかな・・・。”って飛んできそうな意識の中で、ふうっと、浮かんだ。 でも、それはほんの一瞬のこと。 だって、水清にそう言われた次の瞬間、 暁水のうすももいろの唇に、 水清の形の良い唇が、 ふわっと 触れたんだもの。 「・・・あ」 って、 暁水の体がびくんと飛び跳ねて驚いてると、水清の大きな手のひらが暁水のほっぺを包んだ。 そうすると、軽く当たって離れていこうとした水清の唇が、もう一度戻ってきて、 まるで、甘い言葉を伝えるみたいに、今度はゆっくりと触れてくれた。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!