NO SURPRISES

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 これは現実なのだろうか。  すでにわからなくなっていた。  ちゃんと自分の足で地面に立っている。立っているつもりだ。  一歩踏み出してみる。歩いてみる。  ぐらぐらと世界が揺れているように感じた。  俺が今生きているこの世界は、こんなにも不確かなものだっただろうか。  大股で行き交う人々。空を飛ぶ鳥。雲。太陽。排気ガスを撒いて走る車。  目で追ってみる。何か、酷く乾燥している。いつからこんなふうになってしまったのだろう。なんて無機質な世界だ。  自宅に帰ると床に転がった。  俺の布団はあんな色じゃない、と思った。  やはり何かが狂っている。  何かのせいでどこかが狂ってしまった。  そのせいで何もかもがこんなにも違和感で溢れているのだ。  確かに存在した死体がない。  何故だ。  脳を揺さぶる。  両目に指を突っ込んだ。力をこめる。  圧力。  転がり落ちる眼球を妄想する。  そろそろと瞼を開く。足元にアスファルトの感触があった。  死んだ人間が倒れていた場所だ。  死体はやはりなかった。  血の痕も、ない。  死体も血も、最初からなかったに違いない。靴の裏で地面を撫でてみる。砂利を撒き上げるだけで、何も起こらない。その砂利さえも存在感が希薄だった。     
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