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《ラウンド0の前についたよ》
メールを送り、辺りを見渡す。
ガヤガヤ ガヤガヤ 賑わうクリスマスシーズン。
もしかしたら今年は生まれて初めて"彼氏"とクリスマスを過ごせるかもしれない…なんて、妄想が走る。
ふと視線を右にやると、私の大好きなキャラクターのぬいぐるみを袋に入れて、壁にもたれ掛かってる人がいる。待ち合わせをしているみたい……。
《ケイタくんもしかして、黒いコート着てる?》
追加でメールを送った。
"ブ-ブ-"
《ついたー?俺も今入り口に出てきたよ!ていうかなんでわかったの?着てるよ? もしかしてどっかで見られてるのかな?笑》
やっぱり!あれがケイタくんだ!
ドキドキしながらも、反対の入り口に立っている人に近づいた。
自然と、顔がほころぶ。
携帯をいじっていたその人に声をかけようとした瞬間、目が合った。
50代くらいのおじさんだった。
ドクン ドクン さっきまでとは違う種類の心臓の激しい脈打ち。
もしかして、騙された…?途端に怖くなった。
・・・
初めてネットの外で会う人は、100%いい人ではないということは、15歳の私も理解していたつもりだった。何十も年上の男性が年齢を偽ってやりとりしていたことに身勝手ながら恐怖を覚え、後ずさりをした。
・・・
"ブーブー"
手の中の振動に助けを求めて、急いで携帯を開いた。
《ハナちゃんは制服?ハナちゃんみたいな人見つけたー!》
ハッ…と視線を上げる。
先ほどのおじさんは、いなくなっていた。
その時ポンっと突然、後ろから肩を叩かれ、驚きながら振り向いた。
そこには、タンクトップ姿の写真をくれたそのままの笑顔の"ケイタくん"が立っていた。
『ハナちゃん…だよね?』
「あ…っはい!あ、うん、うん、ハナだよ。ケイタくん?」
『(笑) どうしたのそんなに焦って。ケイタだよ。』
「…なんだーーー!よかった!!よかったって言うのも失礼なんだけど、さっきそれっぽい人がいて。あ、ほらメールで黒いコートか聞いたじゃん?その人に声かけようとしたら、結構おじさんだったから騙されたかと焦っちゃてって…!」
『(笑) ハナちゃんってそんなに饒舌だったんだ?ほら、落ち着いて、どこかに入ろ?』
ニコッと余裕そうにそう言うケイタくん。私は恥ずかしさで下を向いた。
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