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宿屋にも色々あるが、この町の宿屋は一階が食堂となっていて食事に来る人が多く訪れる。
「調理場を貸してくれないか?」
「貸すのは構わんが、食材は貸せんぞ」
「持って来てるから大丈夫」
宿に戻る前に買ってきた野菜、サラダに合うオリーブオイルのような油と酢などの調味料を持ち込み、早速締めた一尾を三枚に下ろした。
本当は数日経った時が美味いらしいが、そんなに待ちたくはない。
「そりゃ鯛だな?」
料理人が感心しながら見てくるが、魚を薄く切って次々と皿に乗せるのを見て聞いてきた。
「火を通さないのか?腹を壊すぞ」
「新鮮だから大丈夫だ」
切った魚の上に、薄くスライスした玉ねぎを乗せて、酢とオリーブオイルのような油と塩でドレッシングを作ってその上に掛ける。
皿の隅に柔らかい葉菜を添えて、酸味の強い柑橘類の果汁を掛けて完成、カルパッチョという料理だ。
「生魚の料理……」
「誰もが嫌がるけどな、美味いのに」
料理を部屋に持ち帰ると、いつの間にかニーナとトリスタンが帰って来ていた。
外を見ると、夕日が既に落ちきる寸前だった。
「商談はどうだった?」
「無事に終わりました、これで塩の確保は問題ありません」
塩は生きる上で欠かせない調味料だ。
更には干物等も仕入れ、各地に卸すらしいが干物でも庶民の口には入らないとの事だ。
それに港町の魚介類を持ち出す際には関税が掛かる、それも高いらしい。
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