第四章 兆候

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ーーフィン、十五歳。 この世界で十五歳になるという事は、成人したと同等に扱われる。 貴族に生まれた人は、初めて家督を放棄出来るし、何より結婚する事が出来る。 既に名族や有力貴族の子の何名かは婚約者と結婚していた。 「結婚……ねぇ」 「ヴィンザー兄に家督を放棄するのは早すぎるって言われてな、よりによって俺の候補者を選ぶとか……」 現在、俺はビクトルと将棋を差しながら将来について話をしていた。 「俺としては辺境伯の所で兵士になりたい、出世すれば爵位持ちにもなれる、それにシカーダ家の格も上がるしな」 「そういえばグラッフとサファイアは?」 「グラッフは卒業後に自国で兵士になるらしい、サファイアはこのままだと辺境伯から魔道師の誘いを受けるかもな」 「皆、順調に将来を考えているんだな」 俺は、実際悩んでいた。 三年間首席を取っていた時に、ふと思ってしまった。 やりたい事が何一つ無い、と。 様々な事を試してみたが、極めようと思える事が無く、何故生きているのかさえ分からなくなってしまった。 そして、四年生になって初めて首席で無くなった。 「王手な」 「ん、あぁ……降参する」 後二、三手で詰まれる事を見破り、早々にギブアップを宣言した。
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