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「それ何、魚料理?」
「生魚の料理な」
「うわ……本当に作ったよ」
「お前はさっさと下に食いに行け」
フォークを手に取り、果実酒を木製のコップに注いで料理を食べる。
ドレッシングの味、レモンと思われる柑橘系の果汁の酸味、淡白ながらも僅かに感じる魚の油はなかなかの味だ。
野菜の歯応えも良く、料理は成功の部類に入るだろう。
「うん、美味い」
果実酒を飲み、再び料理を口に運ぶ。
その様子を見て、ニーナがこっちへ来た。
「やっぱり一口ちょうだい」
「やだ」
「でも断る!」
そう言ってニーナは、俺の料理を取り上げた。
すぐさま料理を食べると、目を見開いて俺を見た。
「えっ……何これ!?」
「どうしましたか?」
「……美味しい」
するとニーナは、トリスタン辺境伯に料理を差し出す。
少し、恐る恐る料理を一口食べると、辺境伯もニーナと同じように目を見開いた。
「驚きました……」
「ねっ?驚くよね!?」
「気が済んだら返してくれーー」
「弟の物は姉の物、姉の物も姉の物」
ジャイアンだ、女ジャイアンがいる。
「この料理、明日もう一度作って頂けませんか?」
「生魚は食べなかったんじゃないのか?」
「取引している商会の中には魚を卸す事に難色を示している者もいます、理由は他所の料理人に魚を美味く調理なんて出来ないと決め付けているのです」
「いや……俺料理人ですら無いんですけど?」
「このような珍しい料理なら向こうも首を縦に振るかも知れません、お願いします!」
辺境伯に頭を下げられては断ることなんて出来ない、仕方なく引き受ける事にした。
そして生魚のカルパッチョは、野菜だけを残して皿の上から消えていた。
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