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ーーー日が昇り、人々が商売の準備をしている中で、俺は商会の面々と顔合わせをさせられていた。
若い者から年寄りまで、その者達はそれぞれの商会の幹部、もしくは会頭だと思われる。
「そもそも魚を卸すなんて話が馬鹿げている!陸の貴族に魚の味が判る訳ないだろ」
「それに今更料理だと?魚料理を熟知している我々が何故こんな若造の魚料理なんて食わなきゃならんのだ!」
輸出反対派は口々に否定ばかりをしていた。
一方、輸出賛成派は誰もが気まずそうな顔をして互いを見合っている。
「いくら辺境伯だろうがこの話は飲めねぇ、他の港町はどうだか知らんがここでは絶対に売らねぇ!!」
「ですので、彼に魚料理を作らせて判断をお願いします、彼は素晴らしい料理人なのですから」
……料理人ではない。
「ふん!だが不味い料理が出たらこの話は二度と無いと思え!!」
そして、俺は商館の調理場で料理を作る事となった。
既に材料は揃ってはいるが、そこにいる料理人達の目は明らかに威嚇している。
「よろしくお願いします」
俺は頭を下げて挨拶をするが、そこにいる料理人達は何も言わなかった。
「……早速作らせて頂きます」
ひとまず料理人の事は置いといて、料理する事にした。
まずは魚、生きた魚を昨日の要領で血を抜き、その間にドレッシングを作ると次に食材の物色を始めた。
特に邪魔をするつもりは無さそうなので、鍋に火を掛けてその上に竹製のザルを置く。
「これは普段どうやって食べてますか?」
「焼くか煮て食べる」
淡々としながら、その食材については教えてくれた。
「じゃあ蒸すか」
「蒸す?その蒸すとは何だ?」
「蒸気で加熱する調理法だけど?」
ザルの上にその食材を乗せ、蓋をする。
次に目を付けたのは海老だ。
「海老は串に刺して塩焼きにするものだろう、何をしている」
「背ワタを取ってから繊維を切っているが、それが何か?」
こうして聞かれた事を答えつつ、次々と料理を作ってみたものの、後に作る料理はカルパッチョだけで良かったらしい。
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