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ーーー出来上がった料理を一品ずつ出し、それを見た商人達は目を丸くし、一部は睨むように見てきた。
「おい、何だこの生魚は!!」
「鯛のカルパッチョですが何か?」
「生魚なんて腹を壊すような物を、やっぱり魚の事を何も解っていやしねぇ!!」
一際怒鳴る男こそ、この港町の海産物を取り仕切る会頭だ。
問題はその頭の固さであり、自分が認めた事以外には一切耳も貸さない頑固者だった。
「それは日にちを置いた魚だからでしょう、処理はしてあります」
「せっかくなので食べてみましょうか」
トリスタンはそう言うと、恐る事もなく料理を口に運び咀嚼する。
それを見た他の商人達も恐る恐ると食べ始めた。
……数人を除いて。
「な、なんという美味……」
「生魚なのにこれ程美味しいとは!?」
「魚を生で食す料理、皆さんも初めてでしょう」
トリスタンが嬉しそうに説明すると、一部の反対派も悩む仕草を見せ始める。
「魚の輸入を許可して頂きたい」
「……たかがこんな小細工じみた料理一つで魚を卸せだぁ?舐めてんのかぁ!!」
トリスタンの頬には冷や汗が流れていた。
まだ根気強く交渉するつもりだと思われるが、俺はそんな事は知った事では無いので次の料理を運ばせた。
その料理は『牡蠣』だ。
「次の料理をお持ちしました」
「なっ……!?」
トリスタンも流石に予想だにしていなかったのか、少し取り乱した。
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