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私が問いかけんとする。そこで、
「おい、お前らいつまでいちゃついてる!」
せき込んで教室に入ってきたのは、逆隣に座る生徒会長観月君だった。彼は眼を怒らせ、少し赤らめた頬をして私と楓を交互に見やる。
「別に、いちゃついてはいねえよ」
「嘘つけ。お前のそういう台詞にはあきあきだ」
「妬いてるの?」
「おふざけは後にしろ。早く、帰るぞ」
私はあの楓から最大級のヒントを与えられた気さえして、嬉しくて飛び跳ねそうになった。興奮がおさまらない。こんなことがあっていいのだろうか。ああ、先生が懺悔室にいる神父様であれば、すぐさま話したいのに!
神様、私の右隣と左隣の男の子が恋をしています。
私は胸をときめかしながら、一緒に帰る二人の背中ばかり見つめていた。
◆
ふと、我に返った。教室には喧騒が満ちている。あたりは今日最後の授業、HRを待つみんなの和気あいあいとした声音が響いている。私の机に腰を軽くかけて、仲良しだと勝手に思っているももこちゃんが話しかけてきた。
「ねえねえ、桜子さん」
「なあに」
ももこちゃんがにやにやしながらこちらを見つめてくる。その豊かな頬が緩んでいる。これは、あっちの話だな。
「ふと思ったんだけどさ」
「はい」
「生徒会長と楓君って、付き合ってたりとかしないのかな」
ぶーっと、思い切り喉に流していた牛乳を吹き出しそうになってしまった。なぜ、思い出していた矢先にそんなこと。
「……なんでいきなり」
「いやさー萌えるじゃんか。絶世の美男子と美男子の恋よ? 生徒会長って部費減らしたり規律に厳しい鬼って一部で言われているらしいけど、でも問題児の楓君には素顔を見せるってシチュエーション、よくない?」
「よくない」
私が吐き捨てるように言うと、ももこちゃんが鼻孔を怒らしてたたみかけてくる。
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