第二診察

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 話を聞きながら、私は薬屋が居合わせたという魔女狩りを意図せず想像していた。  十字形に縛られた丸太、十字形に縛られた人。オレンジ色の炎。血色の悪い顔の役人。魔女を弾劾する人たちの怒号に混ざる嗚咽、悲鳴、慟哭。オレンジ色の炎、燃える燃える…。丸太の、人肉の焼ける煙が喉奥に絡まって咳が出る、涙が出る…。オレンジ色の炎、燃えて内側から光る丸太。  いつの間にか眉間にシワが寄っていた。  そして患者が私を見ていることに気づく。空想にふけって注意散漫になるとは私としたことが不甲斐ない。  「なるほど、残忍…。ご自身でそうおっしゃるのですから、処刑なさる側のあなたもすくなからずお辛いのでは?」  患者はしばらく私の方を見ていたが、先生から問いかけられていると気づくや否や、はっとその顔を正面に向き直し、やや間をおいて、その後小さく小さく首を縦に振った。  先生の言葉は責めるのではなく、むしろ促すような言葉だった。問いかける形をとることで、辛いという感情を素直に認めさせる効果がある。さらに問いの反応を見てそれが嘘かどうかも、先生ならある程度見抜くことができる。  誘導されている。  「そうですか…ところで残忍とおっしゃりましたよね。そうなるとあなたは魔女狩りにはあまり乗り気ではないように見えるのですが、いかがでしょう。」  患者は一瞬、しまったといった顔をした。…ような気がした。表情の変化を起こす体力などとうに使い果たしてしまっていて、実際にはその表情は微動だしなかったのかもしれない。瞬きの次には、ただ控えめに疲れた顔をしていた。プライベートで見せるような疲労の表情ではなく、あくまでマナーを重んじつつも、すでに心ここにあらずの表情である。  「ええ……。意義は見いだせていませんね。」  不毛だとしても、しかし命がかかっているのなら仕方がないことではないだろうか。私にはわからない。そういった境遇にさらされたとこがないからだ。私の雇われる理由に不毛なものなどない。みんな自分の身を守るのに必死だった。
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