第1章 シュメイプワールド

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デート行くの面倒臭いなぁ。「俺と付き合って」って告白されたから仕方なくオッケーしたものの、元々そんなに私は拓也の事は好きじゃない。 拓也は見た目も地味で目立たないし、どちらかというとオタクっぽい雰囲気。正直、全く好みじゃないのだ。 ただ、彼氏がいないのはグループで私だけだったし周囲との恋バナについていけないのも嫌だった。そんな邪な理由で、冴えないクラスメイトの拓也と交際する事になった。 「僕と付き合ってくれて、ありがとう。君は、僕の好きな物語の中に出てくるユリア姫様にソックリなんだ。だから、ずっと君の事が気になっていたんだ。」拓也は、今日も私に気持ち悪くて意味不明な事を言ってきた。 「はぁ?ユリア姫?何それ?漫画に出てくる人?」と私が言うと「ユリア姫様は、僕が書いた小説の中でも最も好きな話『シュメイプワールド』に出てくるお姫様なのさ。」と、これまた訳の分からない事を言ってきた。正直、拓也の頭の中の世界観は闇が深すぎてついていけない。 今日も、拓也とメイド喫茶でデートの約束だった。正直、何でメイド喫茶で待ち合わせな訳?もっと、普通にチェーン店の喫茶店で待ち合わせにしてもらった方がいいんだけど・・・。 拓也と待ち合わせをした喫茶店の名前は「シュメイプワールド」。拓也が作った小説のタイトルと、全く同じだ。もしかして、お店の名前をそのまま小説のタイトルにしちゃった訳?それって、完全にパクリだよね・・・。 ドアをガチャリと開けた途端、ドアの向こうは真っ暗闇だった。物凄い勢いでドアの向こうに吸い込まれた私は、叫ぶ事も許されぬほど強い風の渦に飲み込まれてしまった。
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