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「冗談じゃないわ。
薄々気づいてるかもしれないけど、私別に貴方の事好きでも何でもないんだから。
ただ、クラスのみんな彼氏いる人ばかりだし。たまたま貴方が告白して来たから、付き合ってあげようかなって思っただけ。
何で、私があなたの妄想の世界のお付き合いしなければならない訳?
早く、元の世界に返してよ!」と拓也に伝えると、拓也は「クスクス」と私を見て笑った。
いつもクラスでは分厚い黒縁眼鏡をつけてデメキン状態の拓也。眼鏡を外した姿を見て初めて気づいたのだが、潤んだ綺麗な瞳と綺麗で優しい声の持ち主という事だった。
正直、クスッと笑った時の目尻のクシャっとした皺や儚げな表情も、もしかすると好みかもしれない・・・。けど、もしここで拓也の魅力を認めてしまうと自分が負けてしまうような気がしたのだ。
駄目。今、ここで拓也の魅力を認めてしまったら駄目。私は拓也に愛されて告白され、仕方なく付き合う事にしたんだから!
「あのう・・・さっきから全部心の声、聞こえてるんだけど?」
と言って、拓也は更にアハハハと高らかに笑った。
えっ、どういう事?私の心の声が全部聞こえているって?まさか・・・。
「照れなくても大丈夫。
姫様はクラスメイトの時から、ずっと僕の事を気にかけていましたよ。ただ、僕はワザとオタク風を演じていたから黒縁眼鏡も実は嘘です。
本当は、視力も5.0。遥か向こうの景色のみならず、心の中も透けて見えてしまう位です。」
「は?5.0?」
「そうです。姫様はずっと、周囲の目ばかり気にしていましたよね。本当は、聡明で高貴は方だというのに。
だから、本当は僕の事も気になっているのに自分の心に蓋をしていたんですよ。」
この人、何を言っているの?私の事なんて、大して何も知らない癖に・・・。
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