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「えぇっ!? 初恋の彼と再会した!?」
「ちがっ……! 初恋の人と同姓同名の人と会ったって言ったでしょ!!」
この日は三人それぞれ就職先の入社式だった。
緊張して出掛けて行った私たち。揃って三人疲れ切った顔で帰宅した。
いつもは当番制で自炊しているけれど、今日ばかりは誰も作る気力もなく、仲良く近所のスーパーへ向かいお惣菜を購入してきた。
そして夕食時、話題は当然入社式の話になる。
桃乃は誰もが知っている大手電子部品メーカーの本社勤務。
杏珠は親戚が創設し、今や新鋭企業として取り上げられるほどまでに成長したwebデザイン会社。
それぞれ無事に社会人になれたわけだけど、悩みや不安は尽きない。
そんな話の流れで私もふたりのように、今日あった出来事を話した。隣の席の彼とのことを。
「月菜の初恋の人って確か、五歳の時だっけ? 近所のわんぱく少年」
桃乃とは違い、興奮することなく問いかけてきた杏珠に私は静かに頷いた。
「そうなの。同じ名前だから、びっくりしちゃってさ」
私の初恋は五歳の時だった。
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