#13

12/27
前へ
/296ページ
次へ
「ごめんなさい、内緒で保育園から出ちゃって。……でも僕、どうしてもお兄ちゃんのために月菜ちゃんに家に来てほしくて、それで……」 今にも泣き出してしまいそうになりながら話す悠一くんの身体を、坂本先輩は力いっぱい抱きしめた。 「バカ、心配しただろうが。……でも本当に無事でよかった」 「お兄ちゃん……」 ふたりのやり取りに目頭が熱くなってしまい、慌てて手で目元を押さえてしまう。 すると坂本先輩はハッとし、悠一くんを抱き上げ私の方へ歩み寄ってきた。 「悪かった須藤、悠一が迷惑かけて」 「あ、いいえ」 静かな室内。お互い言葉が続かない。 坂本先輩も珍しく気まずそうに目を泳がせている。 いつもと様子が違う彼。……やっぱり坂本先輩がきょうくんなのかな? だからこんなに動揺しているの? 喉元まで出かかった時、悠一くんが声を上げた。 「お兄ちゃん、せっかく月菜ちゃんが来てくれたんだよ? ちゃんと素直にならないとだめだよ!」
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1534人が本棚に入れています
本棚に追加