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「ごめんなさい、内緒で保育園から出ちゃって。……でも僕、どうしてもお兄ちゃんのために月菜ちゃんに家に来てほしくて、それで……」
今にも泣き出してしまいそうになりながら話す悠一くんの身体を、坂本先輩は力いっぱい抱きしめた。
「バカ、心配しただろうが。……でも本当に無事でよかった」
「お兄ちゃん……」
ふたりのやり取りに目頭が熱くなってしまい、慌てて手で目元を押さえてしまう。
すると坂本先輩はハッとし、悠一くんを抱き上げ私の方へ歩み寄ってきた。
「悪かった須藤、悠一が迷惑かけて」
「あ、いいえ」
静かな室内。お互い言葉が続かない。
坂本先輩も珍しく気まずそうに目を泳がせている。
いつもと様子が違う彼。……やっぱり坂本先輩がきょうくんなのかな?
だからこんなに動揺しているの?
喉元まで出かかった時、悠一くんが声を上げた。
「お兄ちゃん、せっかく月菜ちゃんが来てくれたんだよ? ちゃんと素直にならないとだめだよ!」
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