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「悔しかったんだ……高校で再会できたのに、お前は俺のことなんてすっかり忘れていたから」
「……え」
ドキッとしてしまった私に、坂本先輩は顔を埋めたまま続けた。
「俺は一度も忘れたことなんてなかったよ。……それにすぐ気づいた。お前が月菜ちゃんだって」
坂本先輩の口から初めて聞いた『月菜ちゃん』に、胸がギュッと締めつけられる。
懐かしい名前呼び。昔、きょうくんが呼んでくれていたから。
それじゃやっぱり坂本先輩がきょうくんなの?
「それなのにお前は全然覚えていなくて、そのくせ同じ部活に入ってきたり、俺のこと好きな素振り見せたり……」
ゆっくりと顔を上げる彼と視線がかち合う。
悔しそうに瞳を揺らしながら、彼は私に訴えるように話していった。
「ふざけるなって思った。俺のこと覚えていないくせに、好きになるとか。俺は忘れたくても忘れられないほど、お前のこと好きでたまらなかったのに……っ」
う、そ――。
坂本先輩が私のこと……ずっと好きだった?
瞬きもできずにいる私に彼は続けた。
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