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会っただけでは気づけるわけがない。
「そうですよ、どうして名前が違うんですか? きょうくん、私には『あらいきょう』って名乗っていたのに……っ」
一番知りたいことをぶつけると、少しだけ坂本先輩の表情が曇った。
「それに関しては悪かったと思っている。……でも当時の俺は、お前になにひとつ嘘はついていないから」
嘘はついていない? どういう意味?
理解できない私に坂本先輩は話してくれた。
「俺……幼少期、ずっと母親から虐待を受けていたんだ」
「――え」
驚愕の過去に言葉を失ってしまう。
「食事もろくに与えてもらえず、ほったらかし状態。……覚えていない? お前に会う時の俺、いつも汚かっただろ?」
悲し気に瞳を揺らす彼に、思い出す。
そういえばきょうくんはいつも泥だらけだったと。
「家事もやらない人で洗濯も掃除もしない母親だった。おかげで着る服もなくてさ」
力なく笑う彼に胸が締めつけられてしまう。
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