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「高校生の時、気づけなくてごめんなさい。でも私、きょうくん以来だったんです、人を好きになれたの。走る姿に見惚れてしまって、なぜか目が離せなくて。嫌われているって分かっても、気持ちを止めることができなくて……。『お前だけは抱けない』って言葉が、ずっとトラウマになってしまうほどで」
「え、トラウマ?」
声を上げると坂本先輩は私の顔を覗き込んできた。
そんな彼に気持ちをぶつけた。
「そうですよ! ショックだったんですから! ショックで忘れられなくて、付き合った人ともうまくいかなくて。……ずっと坂本先輩のこと忘れられませんでした。でもいい加減もう忘れないとって思っていたのに、会社で再会しちゃって……」
唇をギュッと噛みしめ、今までの想いを伝えた。
「再会しても冷たくて、なのに後輩としては嫌いじゃないって言われて、初めて優しくされて。振り回されていたのは私の方です! なのに坂本先輩は高校時代のように遊び人だって聞かされたり、実際に街で女の人と一緒にいるところを見ちゃったり、子供がいるって聞かされたり……」
「は? ちょっと待て。なんだよそれ」
私の声を遮り慌て出した坂本先輩。
「遊び人で子供がいる? 街で見かけた?」
意味が分からないと言うように捲し立ててくる彼に呆気にとられてしまう。
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