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僕の名前は蘭。
この女の子のような名前でからかわれたのは、高校3年までの人生でもう何回あっただろ。
残念ながら虚弱体質で、身体も細いし色も白い。スポーツも全然できない。
男らしい要素はゼロ。
「らーんちゃん!」
今日も僕をこう呼ぶのは、幼馴染のノブ。
僕とは真逆な屈強そうな身体付きで、スポーツ万能で色も黒い。
いくつもの部活で助っ人に呼ばれているノブは、冬でも日焼けして、唯一口から覗く白い歯が憎らしいくらいだ。
友達も数多くいるのに、なぜか俺に毎回構ってくる。
「蘭ちゃん、今日も体育の持久走ドベだったなー。
だっせーの。」
「うるさいな。体育は苦手なんだ。」
毎回からかわれてるのに、何故か真面目に相手をしてしまう自分もおかしいと思う。
そう。
僕はおかしいんだ。
「蘭ちゃん!もーすぐバレンタインだな!」
「あ、そっか。もう2月か。」
「俺は今年何個かなー?蘭ちゃんは?」
「僕は作る側だからいいんだよ。」
「そっか、蘭ちゃん製菓学校に進学するんだよな。」
そう。
僕はまたちょっと情けないけど、男のくせにスイーツが好きだ。
特にチョコレートが好きで、有名なショコラティエの作ったチョコレートに 感動して、製菓学校への進学を決めている。
「蘭ちゃんは俺にくれないの?」
!!
「はっ…。なんで僕がノブに…。」
「だってそこらの女子のより美味そうじゃん。」
「あ、あげないよ!
だいたいバレンタインは、普段告白する勇気がない女子のためのイベントじゃん。」
「それな!
でも今の女子って、バレンタインいらないくらい逞しくね?
男の方がヘタレだよなー。」
「ノブだって彼女いないじゃん。
そこは男らしく告白すれば。」
「告白ねー。
僕も勇気がないのでちゅ。」
「その体つきでキモいこと言うな。」
うそだ。
キモいのは俺だ。
「ま、蘭ちゃんのチョコ期待してる!
んじゃな!」
毎度のことながら、ノブは言いたいことだけ言って帰る。
俺も言いたいことが言えたら…。
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