バレンタイン

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翌日、こっそりと紙袋を持って家を出る。 学校では一日中、ザワザワとした空気感が漂っていた。 ノブは…。 朝の下駄箱から始まり、休み時間の呼び出し、昼休みに囲まれ、大忙しだ。 放課後にやっと女子が帰るまで、僕は図書室で勉強するふりをしていた。 「らーんちゃん!お勉強終わった?」 「!!」 「教室にカバンあるのに、教室にいねーんだもん。今さら受験勉強いらなくない?」 「ちょ、ちょっとチョコレートのこと調べてただけ。」 「ふーん、もう終わったなら、たまには一緒に帰ろうぜ。」 「い、いいけど。」 「ふん、ふ、ふーん!」 鼻歌なんて歌って、ご機嫌な様子だ。 そりゃあそうだよな。 あれだけ貰えたら、機嫌も良くなるか。 急に自分の気持ちに自信が持てなくなって、虚しさで涙がこぼれそうになる。 「…ちゃん!蘭ちゃん!」 「え?あ、ごめん。なに?」 「蘭ちゃんからのチョコは?」 「な、なんで…。」 「朝、紙袋隠してるの見た。 まだ持ってるんだったら、くれよ。」 「僕の?!」 「うん、蘭ちゃんのチョコ期待してるっつったじゃん。」 「そ、そこまで言うなら。 姉ちゃんと妹の材料の残りだけど、もったいなかったから…。」 「もーらい!」 僕が言い終わる前に、ノブは僕の手から紙袋をかすめ取って行った。 「んじゃ、こっちあげる。」 ドサドサ 「え?!これノブが貰ったチョコじゃん!」 「んーでも蘭ちゃんのが一番美味しそうだから。他は全部あげる。」 「そんな女の子の気持ちとか、お返しとかもあるのに。」 「どうせ毎年食べないし、お返しも返したことないし。」 「そ、そうなの?」 「うん。じゃ、貰ってくわ。また明日な!」 残されたのは、ノブが貰った大量のチョコを抱えた僕。 どうしよう。 本当に渡してしまった。 開けたら…きっと…。
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