第一話

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「こりゃあ、事故死だな」  開口一番は、それだった。  調べれば調べるほど、それを裏付けるものしか出てこない。疑う余地もなかった。ある程度の捜査を済ませ、加賀野刑事は部下に女性の遺体を運ばせた。遺族への連絡は簡単にとれたらしい。  昨夜から今朝にかけて、しとしとと雪が降り続いた。体内にはかなりのアルコール。おまけに履いていたのはハイヒール。場所は歩道橋の階段の下。死亡推定時刻は深夜二時。  真夜中、人通りの少ない帰り道。少し飲みすぎた身体でふらつきながら、歩道橋の階段を下り始めたとき。雪で一部が凍っており滑りやすくなっていたタイルの上で、バランスを崩し、そのまま転倒。運悪く頭を打って、気を失う。  すぐに救急車を呼べば助かったかもしれない。しかし、ここは住宅街の近くであり、丑三つ時にそうそう人が通るようなところではない。そのまま目が覚めることもなく、息を引き取る。
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