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10
いつの間にか眠っていた。
テレビのスイッチを入れる。
ニュースの時報が九時過ぎを表示していた。
朝食にコーヒーとパン。
食べながらテレビを見る。
良くも悪くも強固な日常を確認する。
今日は講義もなく、昼からバンドの練習。
学生の内かな、と思いつつ。
、、、、、、続けられるといいなと思っている。
着替えながら翠の事を考える。
昨日のメールに返信は未だない。
ポケットに携帯を入れる。
ベスパに乗ろうにもこの天気では。
傘をさして歩きだす。
荷物が重い。
イヤホンを耳に入れる。
水溜りを避けつつ駅へ。
歩き出して、ふと立ち止まる。
あ、ガスとテレビ。
栓を閉めスイッチを切りに戻る。
11
「身請け金は用意できないと」
集中できないので練習はすぐ終わった。
お代わり自由の紅茶をすする文(ぶん)。
「いまのところ」
預金も無いし稼げる額でもない。
「出せなくもないですよ」
秋羅はにっこりと笑った。
「音楽で世界を取るていうのは、だめだな」
馨は冗談を言おうとしたらしい。
「打つ手なし、か」
哲夫にまとめられた。
「もうじき来るよ彼女」
どう来るかは聞いてなかった。
窓の外、水飛沫を上げ走る車達。
結局何も出来ないのだろうか。
店内には軽音楽。
入口に人影。
翠が若干うつむいて笑っている。
迎えるよりも早く翠が入ってきた。
「こんにちは」
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