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「え、なになに?なんで笑うわけ?」
「イオくん、わたしと流助さんには、それ致死量です……」
「イオ、かわいすぎる……なんでそんなかわいいこと言う、かな……?」
「別に……かわいくないし。普通だし。あ!!今夜ハワイアンBBQだからね?ブッフェがいいっていってもきかないからな」
「いいですよ」
「うん、俺もBBQがいいと思ってた。うん、そうしようね」
かわいい。
鳥飼と流助はイオをはさんで同時に頬にキスをした。
この寂しがり屋め!!
「おーい、なんで泳がないの~?」
浮き輪ではしゃぐ流助に、プールサイドのデッキチェアでごろごろしながらカクテルをすする二人は手を振るだけにとどめる。
「ほんっと子ども」
流助に笑顔を返しながら、鳥飼にしか聞こえない声でイオは言う。
ちょっとひと眠りしたくなってきている鳥飼は、イオの言葉に、くすっと笑った。たかがプールにはしゃいでいる流助が、二人とも愛おしくてたまらないけれど、確かに参加する気はおきない。
イオはさっきのかわいさから一転、その横顔は、近づきがたいクールビューティーだ。パブリックな場所だとキリッと切り替わるのだ。いろんな顔を持つ人だなあ、と鳥飼はしきりに感心する。
「おーい、この際三人でお店するってどうー?」
流助が水の中から叫ぶ。
「それいいね~!!流助がキッチンならぼくがサービス担当~!」
イオが、流助に調子よくこたえる。
あー、それは考えたことがなかったと、鳥飼は眠りかけた脳が勝手に起動して、無意識に現実的な図面をひきはじめる。三人でお店か、それは考えたことはなかった。
「いろいろ食えていろいろ飲める店~!お店の名前は、『ハンサム・テーブル』!!」
「名前ダサすぎるぞー!!」
イオは笑いながら、水に浮かぶ流助に言い返す。そうしながら、鳥飼の頭を優しく撫でた。遊びで言ってるんだから、いろいろ考えなくてもいいよと言っているようだった。
「鳥飼さん、疲れているんだから、今は寝な?」
そんな言葉が手の平から伝わってくる。そうだなあ、そうか、遊びか、と鳥飼は思うと仕事脳は自然にスリープ状態にはいる。すぐに現実に、ビジネスに結びつけるのは悪い癖だ。
本当にやるやらないは関係なく、夢を口にしてもいいのだ。軽薄に、あさはかに。
長いんだから、ゆっくりいこう。
三人いればどうとでもなる。
end
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