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「はあ……」
もう、溜め息しか出ない。
伝染指定の病気に掛かって出勤停止の間に部下がしでかした失態……
時空の歪みの修正の為に出勤早々この古めかしい時代に文字通り飛ばされたのだから。
転移するのにもあまり近い位置に座標を確定するわけにもいかないから、飛ばされた場所は目的地まで1キロ弱の距離。
まっ暗闇の中そいつの場所を確認しながら移動する。
舗装されていない道を歩けば、砂埃が混じった風が頬を撫で髪を揺らした。
「おい、里中……」
一つ目の通りを曲がり、延々とまっすぐぐ歩いた所で、可愛いがアホな後輩をとっつかまえた。
「あ、葵先輩?!平成に行った時に伝染指定の病気貰って勤務停止中ですよね?鬼の霍乱(かくらん)って室長が言ってましたよ~」
「人をなんだと思っている?インフルエンザは仕方ないだろう……」
対応したナノマシンを入れてなかったというか、新米が間違えたからなんだが、一番はあいつの勤務時間に医務局に行きたくなかった……まぁ、それは置いといて。
それにしてもこいつ呑気すぎやしないか?
目をまん丸にして驚いたと思ったら、小首を傾げて緊張感の欠片もありゃしない。
「お前、ターゲットを捕獲できないどころか間違えてこの時代のヤツ抹消しちまうんだよ……修正にきた」
「マジですかっ?!時空旅券法違反者一人捕まえる任務なのに何を間違えて抹消ですか?」
それはこっちが知りたい。
お前アホだから……てか、何しでかしたんだよ?
審査が通れば民間人でも時空旅行が出来るが審査は厳しいし、してはいけない事や守らなければいけない事が山ほどある。
もちろん罰則だって厳しい。
ただ、修学旅行に使えるくらいだからどうなんだ?
「詳しくは知らない……だがあと360秒後だな」
ほぼほぼ説明もなしに慌てて飛ばされたんだから、そもそも知るわけがない。
小さく息を吸い込み、支給品のパラライザーに指を添えた ――…
葵凛子、23歳
飛び級を重ねて最年少で時空管理局に入局。
細かい説明は省く。
面倒だから。
あと、今青リンゴって思ったヤツぶっ潰す。
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