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5話「斬撃の傷跡に立ち尽くす女」
私たちは川を離れて森の奥へと入っていった。木に赤い血が飛び散ってるのが当たり前になってきてる光景が私の目に映る。それにしてもニセモノとはどういうことだろう。そんなことを思ってた私に同感したかは不明だが、後ろにいた葵が私にこう聞いてくる。
「ニセモノって何なんだろうね。ねぇ、もし私がニセモノだったら殺すの?」
私の足はそのまま止まってしまった。その拍子に彼女の体が私にぶつかる。私には答えることができなかった。そんな私を彼女はこう言った。
「もし私がニセモノだったら花火ちゃんの手で殺してね?約束だよ」
氷の表面に手を乗せたかのような寂しく冷えたその言葉に私は「考えとく」としか答えることができなかった。
そんな私たちを招き入れるかのように私たちの歩いてきた道から森に向けて風が吹き上げていた。見るとそこには森の木々がなぎ倒されていて一人の眼鏡をかけた女性が二本の剣を持っていた。そしてその周りには赤い血が塗られた土。そしてその上に寝そべる人たち。その人たちの上に小さな石があった。いや、違う。あれは無数の血管が浮き出た心臓が動かなくなり赤黒くそこにある。
「また人が来た。ふふ」
「ひぃ!!」
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