5話「斬撃の傷跡に立ち尽くす女」

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その眼鏡から垂れ落ちる血と彼女のにこやかに笑ってる表情を見て葵は怖がっている。 「ねぇ、あなたたち、友達同士?いいわね。でもね、ここにいる人たちはあなたたちみたいに仲良くしてたわ。家族や姉妹、さらには友達。そんなのが私の手で切り裂かれた表情を見た時、私、興奮しちゃったわ。あなたたちはどんな顔をするのかしらねぇ?」 こいつはやばいと言葉を聞いて確証した。尋常じゃないほど狂ってやがる。だが、私は葵とは違ってこの状況でも怖がることはなかった。なぜなら、私は殺された危機にあったのはこれで二回目だからだ。そして目の前にいる女の立ち姿を見ているとその私の家族を殺したあの男にそっくりで頭に血が上ってくる。私は両手の二つの剣を力強く握り締めて彼女へ歩み出る。そんな私は一つの手が私の右足を力強く止める。 「行かないで……」 後ろを振り向くと座り込んでた葵が唇を強く噛み締めながら、私の右足を掴んでいた。 「葵。約束は守るからその手を解いてくれないか?」 「やだ」 「そうか。なら、その手を斬ってもいいよね」 「いやぁ……あっ……」 彼女の手が離れた隙に歩き出す。彼女は離れた私に気が付いて思わず「あっ」と声が出てしまったのだろう。そんな彼女に私は「必ず帰ってくる」と告げた。     
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