6話「ライバルに仇あり」

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6話「ライバルに仇あり」

目の前にいる男。その男のことはよく知っている。なぜなら、同じ師匠の元で共に励んできた元弟子だからだ。私からすれば兄弟子として尊敬していた。あの頃までは。 あれは急に兄弟子である目の前の男が家業で忙しいがためにいなくなって一週間が経った頃である。私はその日もいつものように師匠の元で剣を振る舞うための稽古に励んでいた。この時の私は当然ながら今よりも気も力も弱かった。だからすぐに失敗やミスをすると涙を流してしまう。そんな私を師匠は黙って見てた。慰めることもなく、厳しいことも言わずに優しい眼差しだけが私の体をぶつける。そして的確なアドバイスを口にして他の弟子達に教えるのだ。 その日は曇で雨がいつ降り出すかわからない天気だった。だから案の定、その日の帰りは激しい雨が降り私は家に傘を忘れたことに後悔した。 そしてその家に着くと、家は跡形に壊されていて三人ほどの赤い血が塗られた体がそこにあり、一人の見知った男がそこにいた。その男をまるでシルエットでも作り出すかのように雷が降り注ぐ。 「ちっ。嫌なところを見られたな」 私はこの言葉を殺した直後に見られてしまったのだからそう言ったのだと後悔した。 「貴様ー!!」     
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