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7話「恩は仇に変化される」
師匠は私の顔を見るなり、にこやかに笑っている。
「どう……して?」
私の目に映った彼の目もまた赤かった。
「おやおや、これはあの時の私の弟子。そして眼鏡の女の子もいたんだな。そしてこちらは君の兄弟子。いやぁ、兄弟子君には毎回邪魔されたよ。『そこで何をしている』って何度も聞かれたっけな。何をって見ればわかるだろうって言いたかったよ。君もあの時いれば分かっただろうな?私が人を殺していたのを」
「何を……言ってるの?」
私の頭は破茶滅茶になっていた。師匠が人を殺したと言うんだから。それに先程殺した兄弟子がそれを阻止したって。それじゃあ、まさか……。私は目を見開いた。
「やっと気付いたようだね。そう、そこにいる眼鏡の子の家族もあの道場にいた弟子たちもそして君の家族も私の手で殺した。何のためにか教えてやろうか?ストレス発散だよ」
私の目から熱い大粒の涙が零れ落ちた。そしてそのまま手に持っていた剣に伝わる。
「あなたに呼びたかった言葉で謝らせて。ごめんね、お兄ちゃん。そしてありがとう。私は大丈夫だから、どうか安らかに」
私は小声で先程殺した兄弟子に小さな声で呟く。そして力強く両手の剣を持ち直す。
「そしてもう一つ。剣を持つ者に支えはいらない。なぜなら、弱くなるから。今のお前のようにな?」
師匠の刃が私の交差させた刃に交じり合う。止められずに体が宙に浮いた。私は土に体をぶつけた。そしてその土にあの時の思いが思い返された。
「こんなか弱い子がいるから弱くなるんだよ。だから殺してやるよ、なぁ?」
「ひぃぃぃぃい!!」
葵は今までにないほど悲鳴をあげている。私は痛みを押し殺して彼女の前に立ち、彼女を切りかかるその剣を止めた。
「何の真似だ?」
「彼女は弱くない。なぜなら……私がいるからだ!!」
私は二つの剣を力を込めて彼の剣に払い除ける。彼は体を宙に浮かして何本もの木を薙ぎ倒して吹き飛んだ。
「くっ。なぜお前はそこまでの力を使える」
「守る……いや、守りたい奴がそばにいるからだ。私が死ぬ時はそいつと一緒に死ぬと決めたからだ!!」
私は足に力を入れて勢いよく彼に走る。そして彼の首を斬り飛ばした。
その直後、どこからか男の声が聴こえた。
『最後のニセモノは残り一人だ。さぁ、殺しあえ』
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