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最終話(8話)「その瞳に映るモノ」
私は先程の力でもう体力を使い果たしてしまい、立つことさえできなかった。それに最後のニセモノはたった一人だけ。葵がもし狙われたとしてもこの二つの剣のうち一つでも投げ飛ばせれば葵から敵の視線は逃れるはず。その葵が私に近寄ってくる。心配してくれているのだろうか、困ったような顔をしている。
「葵。私は大丈夫だよ」
「私……いやだ。したくない」
彼女の言葉に震えがあった。何を言ってるんだろうか。彼女の目は赤くないから死ぬことはないのに。それとも何をしたくないのだろうか。彼女は大粒の涙を目から零しまくる。
「どうしたの?葵?」
「私……殺したくない」
彼女は急にそう泣き叫ぶ。空から急に小さな雨粒がぽつりと落ちてきた。
「誰を殺そうとしてるの?師匠たちはちゃんと殺したよ?」
彼女の小さな手がゆっくりある一点のモノを指差した。その先にあったのは……私だった。もしかしたら私の先にあるものだろうと思い、さり気なく体を横に揺らす。しかしその体に付きまとうかのように彼女の指は追いかけて来る。
どうやら、最後のニセモノは私だったようだ。
「私が最後のニセモノか。まぁ、復讐も済んだし葵が心配だけど悔いはもう無いかな?」
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