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「それがやだのー!!」
彼女のその金切り声が私の脳内に響いてかなり痛かった。そんなに悲鳴をあげられたら他の人にバレてしまうではないか。
「さっき……師匠に言った言葉忘れてないよね?」
「いや、あれはそうじゃなくて」
彼女は私を両手で包み込む。彼女の顔が間近に現れる。その瞳の中に映る私の瞳は赤かった。まるでニセモノであることを証明しているかのように私の目は赤かった。私の目はフェイクアイだったのだ。その目を見て脳内に誰かの声がかかる。
『目の前にいる女を殺せ!!何をしている?早く殺せよ』
何度もそう言った言葉を浴びさせられる。だが、私の体にもう力など入らない。
「指示されてるんだよね?辛いよね?今、楽にしてあげるからね?」
私の後ろで何かが当たる。
「やめろ。これじゃあ、葵も」
「大丈夫」
「死ぬの怖くないのか?」
「大丈夫」
「撃ちたくなかったら自分で首跳ねるから」
「もぅ……」
彼女は私の唇に乾いたしっとりとしたその唇をそっと合わせる。
「……私のファーストキスのお返し」
「あお……」
私の脳内に強い痛みが走った。目の前にいる彼女の顔が赤い血で汚れていく。私は目を瞑りながらこう思った。
(もう一度会えるかな?あの世へ)と。
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