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4話「川に潜む者たち」
私たちは何も起きることなく、清らかに流れる川にいる。いや、今二つ嘘をついた。一つは何も起きてないわけではない。周りから武器を交える音と悲鳴や血しぶきをあげる音が聴こえてくる。そしてもう一つ。この川は清らかなんかじゃない。赤く染まりあげた残酷な色をしている。そんな色の中に横にいたはずの彼女は汚れた服をそこに付けた。それと同時に何かの殺気がどこからか漂う。
「おい、そんなんじゃ余計汚くなるよ」
「別にいいのですよ。綺麗で戦わずに見られるよりも戦ってきたと思わせた方がいいじゃないですか?」
「ちっ……」
私は服を川で洗っている彼女を肘を目掛けて蹴っ飛ばした。彼女はそのまま仰向けで倒れ込んでいる。服は彼女の手にちゃんと掴んであったが、彼女の剥き出しとなった股間は隠せられなかった。
「何をなさるんですか?」
「ちっ……味方がいたか」
私の目の前にいる大きな剣を手に持つ男が言う。そして私を見るなり、さらに殺気が上がる。
「ごめん。痛かったか?」
「おぉ、いいもん見えた」
目の前にいる男は鼻を伸ばしながらそう言う。男という者は最低だ。私の二つの剣が震え上がってる。
「心が……痛い……です」
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