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中学の時と同じ、先輩のおっかない顔と声。
あの、メチャクチャに殴られた時を思いだす。
「ウッス……」
小声で答えて座りなおし、シートベルトを締めた。
「止めて下さい、克征さん!」
「放せ祐志ッ。今止めさせねぇとこのバカは――」
「解ってます! けど、これ以上やったら昭仁が……」
――死んじまう。
先輩の腹にしがみ付くようにして止めてくれようとしたユウの背中が、脳裏に浮かぶ。
落ち込んでいる時にかぎって、なんで更に落ち込むような記憶がよみがえんだよ……。
あの時。オレが死んじまうと必死に先輩を止めようとしてくれたユウに思ったのは、「オマエに止めてもらうくらいなら、死んだ方がマシだ」だった。
マジで、救いようがない――。
ダチに感謝するどころか、オレは。「克征さん」と呼んだユウに、それを当然のように受け入れていた先輩に……嫉妬したのだ。
その自分の気持ちに気付いた瞬間、「バカみてぇ」と嘲りの笑いが洩れた。
途端。オレの顔を見た先輩が、目を剥いたのが判った。
ユウの襟首を掴んで、容赦なく横へと払い投げる。
「何、笑ってんだ! テメェはよぉ」
路地のゴミ置き場に突っ込んだユウを、先輩は見向きもしなかったのだ。
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