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――怖い、と思った。
今まで何度も先輩達に感じた恐怖なんて、比べものにならなかった。
胸倉を掴んできた先輩に、思わず両腕で顔を庇う。
すると腹に拳が入って、殴られ始めてから何度目かのゲロを吐いた。
両膝を付き地面に崩れ落ちたオレに、更に蹴りが入った。
容赦ない、靴底とつま先の感触。
ゴミに突っ込んだユウ以上に、オレはゴミみてぇにボロボロだった。
こんなに、怖いのに。逃げ出すこともできない。
――あぁ、ヒトって。マジで怖くなったら動くコトもできなくなんだなぁ、なんて。現実逃避に考えたりしていた。
「克征さんッ、止めて下さい!」
「これ以上は、昭仁が!」
オレなんて、動けなかったのに……。
タックルするように先輩にしがみ付いたユウを見て、「ああ、そうか」と素直に思った。
オレなんかが、敵うハズなんてなかったんだ。
振り返ったユウのこめかみからは、血が流れていた。
さっき投げられた時に、コンクリのカベで擦れたのに違いない。
だけど。それよりショックだったのは、今にも泣きそうなユウのカオだった。
「ごめん――。すんません。すん……ません……」
涙が出た。
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