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「そういうとこ。君、他の男の子と違って、ちゃらちゃらしてないじゃん? 真面目で頭良さそうなのに、ダサく無くてすっごく垢抜けてる。大人のひとみたい。そんなとこがたまんないんじゃないのー?」
「……じゃないの…? あんたはそう思ってないってことか?」
「ふふっ。ひみつー。さっ。教授来たよ? べんきょーべんきょーっ。」
「………。」
そう言って、ノートを開いてシャーペンを走らせる彼女の横顔に滑り落ちる、少し赤みがかかったさらさらの髪。
そのあまりの美しさに、僕は少し言葉を失った。
この子、すごい綺麗だ。
背中まで伸ばした紅いハイレイヤーが、胸の豊かな曲線をなぞってる。小顔のキャンバスに乗ったパーツは、絶妙に整っていて、どこか異世界の住人のよう。
着てる服も何気にいいセンスだし。
垢抜けてんの自分のほうなんじゃん。
何より、このにおい。
すごくいいにおい。
金木犀?かな?すごくやさしいにおい。
なぜだか懐かしい。
「何? 見蕩れてくれてるの?」
突然、彼女が振り向いてにこやかに笑う。
音が聞こえるくらい胸が鳴った。
僕は慌てて目をそらし、平静を装う。
「…いや。君、なんか見たことあるなって思って。」
一瞬、彼女の顔が泣きそうにほころんだように見えた。
でも、すぐ意地悪そうな笑顔に変わる。
「ほんとに? 光栄だなぁ。学内イチの人気男子に覚えて貰えてるなんてねー。」
彼女は本当に嬉しそうに、またノートに向かった。
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