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「ねっ! クリスマスだよっ? イヴだよ?海くん彼女居ないし予定もないよね?今日は買い物につきあってよね。」
「………なんで彼女居ないって分かんだよ。」
その言葉に、千秋の顔が少し曇った気がした。
「……何?誰かと予定…ある?」
あぁ。この目だ。
こんな捨て犬みたいな上目で言われると、僕はすごく弱い。
ほんと、千秋はズルい。天然なのが余計にムカつく。
「……分かったよ。行くよ。どこ行けばいいんだ?」
とたん、花咲く笑顔。
あぁ。ダメだ。すっごい可愛い。
「やったー! じゃぁねー。名古山のパティスリーでお茶してねー。大津イオンのストーンショップ行ってねー。えーと、えーと。」
「やけに盛りだくさんだな?! 絞らないと全部回れないんじゃ?」
「いいの!今日は初めてのイヴなんだから!」
「…?? 初めてのイヴってなんだよ? クリスマスなんて、毎年来るぜ?」
「だーめ!毎年来ないの! 今日しかないって精一杯生きなきゃ、人生はもったいないことだらけなんだよー!」
「…大げさだなぁ。 まぁいいけど。じゃぁ、早く名古山行こうぜ。」
「はーい! 」
それから、いろんなところをたらい回しにされ、夜遅くまで散々引っ張り回され、帰路についたのは、日付をとっくに越えたクリスマスの夜だった。
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