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「……海くん…あたしね…………ううん。……ありがとね。じゃぁお言葉に甘えて病院行こっかな。」
「…? まぁいいや。気をつけろよ?」
「うん。また……また逢おうね。じゃぁ……行ってきます。」
「あ? あぁ。またな。」
そして彼女はよろよろと立ち上がり、満面の笑顔で小さく手を振って、教室を出ていった。
それが、彼女を大学で見た最後だった。
***
もう9月。
今まで
早ければ一週間。
遅くても一ヶ月は空いたことはなかった。
いつも突然に
金木犀の香りを連れて、彼女はやって来ていた。
あれからもう三ヶ月。
彼女は一向に姿を見せない。
さすがに心配になった僕は、初めて彼女を探してみることにした。
かといって、手がかりはない。
どこの学部なのかも分からない。
誰か友達が居たのかも知らない。
仕方なく
大学の事務局で尋ねると、学部は同じ理学部。
コースは違うけれど、だいたい僕と同じ講義を取っていた。
自宅や連絡先を聞いてみたが、やはりプライベートな部分はお答え出来ませんと断られた。
それならと、同じコースのやつを片っ端から聞いて回ってみると、僕と同じ高校出身の女の子、須藤久美子が知っていた。
「何言ってんのよ?千秋でしょ?
私たちと同じ高校出身の板野千秋。知ってるに決まってるじゃないの。」
「……へっ?」
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