One day in autumn

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「……んー。6月くらいだったかなー。ここに入学してからも、ずーっと入退院繰り返してて、血腫の状態がまた悪くなったとかで、手術するかどうか迷ってるって言ってたんだよ。それが突然、手術することに決めたからって。そうそう!やっぱし6月だわ。」 「……連絡先と自宅、教えてくれる?」 「…いいけど…あの子があなたに言ってないのなら、逢わないであげたほうがいいんじゃない? だって……もし手術が成功したとしても、確実に後遺症は残るそうだから…。」 「…後遺症?」 久美子は一度深呼吸をして、僕に向き直って言った。 「記憶障害。無くしちゃうんだって。記憶を。」 *** その後のことはあんまり覚えてない。 気がつくと、久美子に貰った住所を頼りに、千秋の家まで全力疾走してた。 なかなか出逢わなかったのは、入退院を繰り返してたからだ。 クリスマスが毎年来ないだなんて、千秋には明日も不確かだったからだ。 一気に符合する彼女のピース。 俺はバカだ。本物の大バカだ。 くそったれ。 家に着くと 優しそうなお父さんが出迎えてくれた。 お母さんは一緒にアメリカに渡ってるらしい。 僕の名前を告げると、涙を滲ませて、奥から何冊かのぼろぼろのノートを出して来た。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加