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「……んー。6月くらいだったかなー。ここに入学してからも、ずーっと入退院繰り返してて、血腫の状態がまた悪くなったとかで、手術するかどうか迷ってるって言ってたんだよ。それが突然、手術することに決めたからって。そうそう!やっぱし6月だわ。」
「……連絡先と自宅、教えてくれる?」
「…いいけど…あの子があなたに言ってないのなら、逢わないであげたほうがいいんじゃない? だって……もし手術が成功したとしても、確実に後遺症は残るそうだから…。」
「…後遺症?」
久美子は一度深呼吸をして、僕に向き直って言った。
「記憶障害。無くしちゃうんだって。記憶を。」
***
その後のことはあんまり覚えてない。
気がつくと、久美子に貰った住所を頼りに、千秋の家まで全力疾走してた。
なかなか出逢わなかったのは、入退院を繰り返してたからだ。
クリスマスが毎年来ないだなんて、千秋には明日も不確かだったからだ。
一気に符合する彼女のピース。
俺はバカだ。本物の大バカだ。
くそったれ。
家に着くと
優しそうなお父さんが出迎えてくれた。
お母さんは一緒にアメリカに渡ってるらしい。
僕の名前を告げると、涙を滲ませて、奥から何冊かのぼろぼろのノートを出して来た。
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