三話 ある日森の中で ③

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「チッ、唾液でベチャベチャじゃねえか。最悪」 「ひぃ! ち、血だらけー!!」  出てきた人は全身真っ赤で血だらけだった。あっ……、ちょっとくらっと来た。ふっと意識が消えそうだった。危ない危ない。 「ん? ああ、そう言えば血も出てんのか。ちょっと待てよ。はい。綺麗綺麗。元通り」  ……え、あれ? 赤色が、血が消えた。ついさっきまで赤と透明の粘液に包まれていたはずなのに、その人がパッパッと服についたゴミを払うような仕草をすれば一瞬で綺麗さっぱり消えてなくなった。何かの魔法? それとも私意識飛んでた? いや、もういいや。そんなの考えないで。考えたところで何も分からないだろうし。それにこれでどんな人か見えてきたしいいや。    きれいになり遂に声の主とご対面。その人物は黒い髪に黒い瞳で纏う衣も黒一色の男性だった。整った顔立ちでまだ若い十七、八ぐらいかな? でも、なんだろう。すごく落ち着きというか、風格や気品が漂うような気がする。 「えー、それでなんだっけ? ああ、俺の不死の話だな。俺は不死だからドラゴンに噛まれたぐらいじゃ死なねえし、何されても死なねえというより死ねねえ訳だ。だから、大丈夫。分かったか? 分かったな?」 「…………」       
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