一話 ある日森の中で

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「うう、怖い。ちょっ、こっち来ないで下さい! あっち行って! ああ! 分かりました! あっち行きますから来ないで下さい!」  無理! 怖い! こっち来ないで! 来るなら逃げる! ごめんなさい!  ……私の冒険者としての第二歩は敵前逃亡から始まった。 「はあ、はあ。追ってきてないよね?」  無我夢中で森の中を駆け、なんとかスライムから逃亡出来た。そして、気づくと少し開けた場所へ出ていた。まだ森の中だが、木々が生えておらずぽっかりと開けた場所へ。 「追ってきてない。……はぁ。低級魔物のスライム相手に逃げちゃうなんて。やっぱり、向いて……、違う違う。もう冒険者として生きていくって決めたんだから頑張らないと。辛いときは空を見上げろって言うし、空見げよう」  辛い時は大きな空を見上げよう。そうすると、嫌なことも忘れられる。毒草を薬草と間違えたことも、スライムから逃げ出したことも……。 「……はあ。空は良い天気なのに、私の心は……なんて。……あれ? なんだろうあれ。……こっちに来てる?」  青く透き通り、雲一つ無く快晴の空には太陽の日を遮るものなど何もない。でも、私が見上げた空はそうではなかった。青く透き通り太陽の日が輝くはずの空は、徐々に黒くなり、遂に黒い影が覆いかぶさり空が全て隠された。 「え、え、え!?」     
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