二話 ある日森の中で ②

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 ぎゅっと目をつむる。これから起こることを考えないために。ドラゴンの鋭い牙に体は貫かれ、噛み砕かれ、最後には胃袋へと落ちていくのだろう。それを考えないために必死で目をつむり、意味の無い暗示をかける。  痛くない痛くない痛くない痛くない痛く、痛あああ!!  暗示をかけている途中で私へ衝撃が襲う。  痛い! 痛い! 痛い! 痛、……あれ?  しかし、ここで私は気づいた。痛みが再び襲ってこないことに。ドラゴンに噛まれたなら痛みは一度だけでなく飲み込まれるまで続くはず。それに痛みが小さく、体が感じる感触がドラゴンの口の中ものではなく地面の感触であることに。  な、何がどうなってるの? 私はドラゴンに食べられたはずじゃ……? でも、この感触は地面だし、それにさっき襲われた衝撃は食べられる時のものと言うより、誰かに押されたような衝撃だったような?  状況が理解出来ない。一体全体何がどうなっているのか。そこでしょうがなく私は色んな理解出来ないことを確かめるべく、恐る恐る目を開ける。そして、目を開けて驚愕の光景を目にする。 「おーい、大丈夫か? 食われてないか?」  ドラゴンはまだ居た。それに誰かの声も聞こえた。そして、その声はドラゴンの中から聞こえていた。 「た、食べられてるぅ!!?」  目を開けて見た光景。それはドラゴンに誰かが食べられて、ドラゴンの口から人の足だけが見えている光景だった。
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