三話 ある日森の中で ③

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三話 ある日森の中で ③

「た、食べられてるぅ!!?」  目を開けて見た光景。それは人がドラゴンに食べられ、足だけが口から見えている光景だった。 「え? マジで? 食われてる? しまった。すまんな、押し飛ばす距離足りなかったか」 「喋ってる!!?」  ドラゴンに食べられ、足だけ見えている状況なのにその食べられてる人物は私へ話しかけてきた。まるで何事でもないかのように。叫び声でも、助けを求め泣き喚く声でもなく平常時の声で。   「いや、そりゃ喋るだろ。俺だって人間だし」 「た、食べられてるのに喋ってる……? 生きて、食べられてる? しゃ、喋ってる? 生きてる?」  私の頭の中はパニック状態と化した。視覚から得る情報と聴覚から得る情報とが余りにも乖離していたからだ。ドラゴンに誰かが食べれている。これは間違いない。そして、私に話しかけているのはその食べれている人。これも間違いない。どっちも間違いないはずなのにどっちかは間違いでしょ!?     
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