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「ねえ、ノックしてるんじゃない? 部屋、間違えてるんだよ、きっと」
ドン。
ドン。
「ちょっと、行ってきてよ」
ドン。
「そうだな」
ドン。ドン。ドン。ドン。
服を着ている間もずっと音はやまなかった。直之は舌打ちをして、扉越しに叫んだ。
「部屋間違えてますよ!」
ドン。
ドン。
「なんなんだよ、まったく……」
直之は扉を勢いよく開け放った。
「いい加減にしろよ!」
暗闇に向かって叫んだが、そこには誰もいなかった。裸足で外に出て、辺りを見回してみたが、やはり人影はない。
「おかしいな……」
呟いた瞬間に、女の悲鳴が聞こえた。美雪だ。直之は慌てて部屋に駆け込んだ。
「美雪!?」
室内は暗い。中の様子がわからなかった。手探りでベッドに向かう。
美雪は、狂ったように悲鳴を上げ続けている。その断末魔の悲鳴が、唐突に、途切れた。
「美雪? なあ、どうした?」
声をかけてみたが、返事はない。直之は震える手で灯りのスイッチを点けた。
明るくなった部屋を見て、直之は自分の目を疑った。
上半身を起こした全裸の美雪の首に、何かがぶら下がっている。それの正体を見極めるために、直之は一歩一歩ベッドに近づいていった。
犬か猫だろうか。戸を開けた隙に入り込んだのだ。
「み、美雪?」
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