追いかける女

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 呼ぶと、美雪が首を傾げた。次の瞬間、美雪の頭が胴体から零れ落ちた。直之は悲鳴すら上げられなかった。ヒィと息を呑んで尻餅をついた。  美雪の首が、ベッドの上でバウンドし、ゴロゴロと転がって直之の足先に触れた。直之は反射的に飛び退いた。美雪の苦痛に歪んだ顔が直之に助けを求めていた。  ようやく悲鳴を発した。美雪が死んだ。首をもがれて死んだ。そんなことよりももっと不自然で不合理な物体が目の前にいた。 「直之、私たち、結婚するのよ。邪魔な女は殺したわ」  杏珠の首がそう言った。  顔中が赤黒い。よく見ると、頭の半分が欠けている。  杏珠の口は真っ赤だった。歯に、何かが挟まっている。それが美雪の肉片だと気づくと、直之は口を抑えた。美雪の首を噛み切って、殺したのだ。  すべてを悟った直之は絶叫した。そして、裸足で部屋を飛び出していた。  夢だ。  夢であってくれ。  夢に決まっている。  杏珠は死んだ。  バラバラになって、死んだのだ。  首だけで、生きていられるはずがない。  足の裏に痛みを感じながら、直之は走り続けた。何度も転倒し、起き上がって必死で逃げた。  こんなことがあっていいはずがない。杏珠は自分が殺したのだ。そうだ、間違いなくあの女は死んだ。  じゃあ、あれはなんだ? 何故、首だけで喋っていられる?  そういえば、電話で友人が言っていた。     
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