藤壺の君

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「会社からメール?」  食後、携帯を取りだして弄っていると、一通り遊具で遊んだ源二が戻ってきて、背後から俺の手元を覗ってきた。 「いや、桐子にお礼のメールだ」 「今日も弁当美味しかったよ、とか送っちゃってんの?」 「まぁな」 「毎日?」 「あぁ」  俺が答える度に声色が低くなっていった源二が、がばっと力強く強引に、火傷しそうな熱で俺の背中を包んできた。 「今はオレといるんだから、オレのことだけ見て」  俺から携帯を取り上げようと伸びてくる腕。  お前を燃やしているのは嫉妬という炎なのか? 己の苦しい胸の内を隠しもしない、その切ない響きに飲まれそうになる。 「お前を見る必要がどこにある?」  飲まれては駄目だ。背中を包む嫉妬の炎にじりじりと焼けていく体に喝を入れ、源二の腕を解こうと藻掻く。 「暴れないでよ。ほら、藤くん、オレが触れただけですぐに熱くなっちゃう」  源二の骨張った掌が俺の頬に触れると、細胞達が歓喜したかのように熱が帯びてきてしまう其処。急激な温度上昇を感じたであろう源二は俺の唇に中指を当て、何重にも巻かれた鎖を解くように優しく、そして劣情を煽るように妖しく撫でてくる。 「やめろ、此処を何処だと思ってる」 「藤の花の下。オレの大好きな藤くんと同じ名前の花の下」 「源二……」  俺の耳許で甘く囁いた源二の熱い唇が耳朶を挟み、もう紅葉みたいではない大人の男の掌が体をなぞってくる。その掌の熱さと与える快感を覚えている体は、俺の意思など関係なく甘美な戯れを求め始める。  Yシャツの裾から入れた掌で俺の体を撫で回しながら、首筋に唇を這わせる源二。煮え滾った硬い塊を腰に押し当てられて、源二の形を覚えている秘部が疼きだす。
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