君のクラスメイトとなりあなたの空気となる

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そう、この時は思いもしなかった。 自分はこれからこの高校で新しい価値を見出だすんだ そう意気込んでいただけなのに、その斜め上をいこうとは ▲▲▲ 入学式の会場である体育館につく頃には既にばらばらといった感じで人が集まっていた この手の行事で使われる三人掛けの椅子は200人は座れるようになっていた これが後10分もしたら一杯になるんだなと他愛ないことを考え適当な椅子に座ろうとしたが、椅子の背もたれに「安登家 美沙」と印刷された紙が付いていた これが椅子に対する変態的倒錯者でなければ座る生徒の名前だろう。そう思い探していると思いの外、早く見つかった さて座って待とうかと待つこと5分。式が始まる前に肩を叩かれた。振り返るとそこには肩口までの明るい茶髪の女性がいた 年齢は俺と10違う。美人というよりはかわいい系の顔立ちをしていた 「久しぶり、おばさん」 耳が聞こえないぶん発音が合ってるか不安だったが、軽いげんこつと「コラ。お・ね・え・さ・ん」という見てとれる口の動きで証明できた そう、この人が母親の知りあいである実の妹の、│本城早苗(ほんじょう さなえ)さんだ 早苗さんが教師をやっているのは正月に親戚が俺の実家に来るとき、本人から聞いていたから知っていたがまさか東京にいるとは驚きだった 「最後に会ったの中2の正月だよね」 それは俺が事故に遭う前の時 それに頷く形で答えが返ってくる 「もう30だっけ?」 さっきよりも数段強い拳が頭を貫く わりと真剣な怒り顔で右手でチョキと左手でパーにしてこちらに見せてきた ここで52と答える気持ちを堪えつつ、25歳という分かっていた答えを認識したことを相槌で返す そこで時間がきたらしく本城先生は他の先生の元へと歩き出した。教師も大変なんだなと他人事のように思いながら椅子に座り直した さて、後は式が始まるのを待つだけかと思っていたが、異変があった │ 早苗姉(さなえねえ)が、サングラスを掛け白色の杖を持った純な黒髪ストレートショートの女子生徒の肩を支えながら席まで誘導していた 女装でなければ女子生徒の制服を着てるから女子で合ってると思う。顔は向こう側が透けないサングラスで目は分からないが、端正な印象を受ける。早苗姉がかわいい系なだけに、女子生徒の格好いいという印象が際立って見える。正直、男にも見えてしまう。そんな雰囲気を醸し出していた
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